と云っても全額、区の裁量で使えるという訳ではない。区を通じて、事実上、国や都の事業となっているものが含まれる。
世田谷区の平成27年度決算(上記)によれば、区の収入の約7割(71%)2003 億円が一般財源ということで、いわゆる、区の裁量で使える、としているが、実態面からいえば、特別区税と特別区交付金を合わせた、1620億円(58%)ぐらいが、“着実な収入”だろう。(2823億円は収入額であり、実際の支出額は2721億円。では差額の102億円はどこに?ということだが、繰越し額という形で次年度に引き継がれる)
区役所の人件費は平成27年度決算では441億円。さらに区が管理する施設(公共施設で「まちづくりセンター」「区民センター」「図書館」および「区道」「公園」)の維持費は今後厳しく見積もっても年間550億円(公共施設等管理計画)以上かかるとされている。すなわち、あわせて約1000億円は最低限の“固定費”として消えて行く。
※保坂区政では、公共施設の維持管理費を先送りして、決算上の辻褄合わせや区の借金隠しをしているので(選挙対策及び自著で数字を誇るため)、決算書はアテにはならない。決算書とは別の「世田谷区公共施設等管理計画」の数字(年間550億円)が現実的な数字である。
実は、区の税収から「国民健康保険事業会計」、「後期高齢者医療会計」、「介護保険事業会計」に合わせて250億円を平成27年度決算では投入している。保険料だけでは足りない分を補填している。しかもこの250億円は今後増大する高齢者を考えれば減ることはない。
世田谷区の収入(歳入)は2823億円。国や都からの補助金を除いて、“着実な収入”は1620億円くらい。そのうち、“固定費”として1000億円(人件費と公共施設維持費)、また医療保険の足りない分の補てんに最低でも250億円かかり、合わせて1250億円は“鉄板”で支出される、というのが私が見る単純化した構造である。残りは実質370億円くらいでやり繰りしているイメージである。
もちろん、“着実な収入”ではない部分が1500億円もあるではないか、という指摘は当然で、国や都からの支出金というのは世田谷区の事業として存在することは冒頭で述べた通りである。
或る事業の4分の1は国の負担、都の補助という形で渾然一体となっているのがザラであり、むしろ区の支出だけで成り立っている事業の方が少ない。
よって、世田谷区の収入や支出を、これは国のお金、これは世田谷区のお金と分けることに何の意味があるのか、ということだが、では国からのお金はどこから来るのだろうか、というのが本稿の本質的な疑問である。
国の税収は58兆円であり、支出は96兆円。足りない38兆円は借金でまかなわれている。(平成28年度国家予算)
つまり国の補助金の原資は借金につながり、その借金が回り回って、世田谷区にやってきている、という構造である。(誰でもわかっていることだけどね。)
かつて、財務大臣が日本の借金(国債)はそのほとんどが日本人が買っている、国民の預金を通じて日本の銀行が国債を買っているから大丈夫と述べていた、記憶がある。
要は、日本の銀行が国債を保有している限り、勝手に売らないだろう、ということだろう。
しかし、10日の日経新聞によると、「海外勢の国債保有は全体で1割、満期1年未満に限ると49パーセントに達する。いつの間にか国債市場は外国人が活発に売買する「国際市場」となった。」とある。
日経新聞は今月に入って、日本国債の不安要因を示す特集記事をトップに載せている。満期1年未満に限ると、約半分が海外勢の保有ということは、短期金利は海外勢によって一時的に“操作”できるということである。
えっ、満期1年未満とは言え、海外勢がそんなに保有していた!とは驚きである。そこで、先日、日銀がこれからは国債の買い入れ量から、長期金利のゼロパーセント誘導という政策変更の意味がわかった。
つまり海外投機家が国債を売り浴びせて儲けようとしても、日銀は断固たる決意で買いまくり、そんなことをしたら大損しますよ、という宣言をしたということなのだろう。
しかし、経済の根本がマイナス金利で動いているというのは誰が考えても、何かがおかしいのではないだろうか。
その可能性を日経は示唆しているのではないだろうか。そのことは、回り巡って、世田谷区の収入の約3割を占める国からの補助金は、相当細くなっていく。
国からのお金が滞ったら世田谷区はどうなるか、という時の私なりの整理の仕方が、本稿前半である。もちろん日本経済が混乱を極めている時に、特別区税と特別区交付金もダメージを受けないはずはないから平時の数字はあてにはならないのだが。