2015/01/13

安倍政権の本質

早いもので今年も13日過ぎてしまった。年末に読んだ左の本が、今の日本の状況を的確に表わしていて面白かった。著者の安冨氏は東大教授であるにも関わらず、東大が生みだす無責任の構造を「東大話法」という分析で有名になった人である。

「ジャパンイズ・バック」は前々回の2012年12月の総選挙で自民党が大勝したあとに書かれた本であるが、ほとんど2014年12月の総選挙後の情勢を見通している。

「ジャパンイズ・バック」は、「立場」という観点から日本の現状と政治を語っている。

バブル以後の日本社会は色々なものを失う時代であって、それは目に見えるものだけでなく、目に見えない多くの「立場」も失ってしまったと説く。〈以下引用〉

家族の一員としての「立場」、会社員としての「立場」、地域社会の一員としての「立場」・・・以前ならばあたりまえのようにあったその「立場」を失った彼ら・彼女らが求めるもの、それはもうそのものズバリ、「立場」です。

われらに「立場」を!

こうした人たちにとって響くのは、実は「アベノミクス」の成長戦略で雇用を生み出してもらう、ということではなく、「君たちに『立場』を取り戻してみせる」という大見得なのです。

すべての立場を失った者にとって唯一残された「立場」、それは国籍です。ただ日本に生まれて自動的に付加された国籍、つまり日本人であること。

ですから彼らはこの「日本人であること」に過大な評価を与え、価値観の軸に置きます。そうすれば当然、「日本人であること」のさらにベースにある「日本」が素晴らしいこと、を「事実がどうであるかにかかわらず」求めるようになります。

この結果、「極右」と言っていいほど右傾化が進み、排外主義が助長されます。中略 彼らにとって自分たち唯一の「立場」、つまり「日本人であること」を補強してくれる(と約束している)安倍氏が魅力的なわけで、「日本を取り戻す」つまり、「あなたの立場を取り戻す」と絶叫してくれている限りは、別に何をやってくれても構わないのです。〈引用終了〉

今夜のクローズアップ現代で、「ヘイトスピーチ」に関する問題を取り上げていたが、視点が少々ズレていた。表現作法とか戦前の時代と似ているという雰囲気論では理解できないだろう。

日本人であることは、この日本において絶対的多数派であり、だからといってそのレベルで政治や社会を語り出しても、何も生まれない。日本人は日本人であるということの繰り返しだから。そもそも国籍という立場でしか自分たちを誇れない社会状況はおかしな方向に向かっているということがよくわかる名著だ。