●平成29年10月4日の決算特別委員会の議事録より
平成29年10月4日 決算特別委員会
◆大庭正明 委員
さて、そこできょうは、一般質問に続きまして、災害時における遺体の管理ということの続きをいたします。
一般質問において、不幸にも大庭正明議員が犠牲者になってしまって、それをどうするかというところから話をしました。
それで、まず最初に、区の最大の死者数というのが六百五十五人となっていて、そこの遺体収容所というのは、十三カ所の地区会館ということで、そこに集められるということになっているんですけれども、そもそも遺体袋というのは、どこにどれほど用意を現在されているのか。
◎荒 災害対策課長
各地域の土木管理事務所に百袋ずつ、それから道路管理課のほうに五十保管してあります。
◆大庭正明 委員
五地域の土木管理事務所に百ずつですから五百、それから道路管理課に五十ですから五十、合わせて五百五十ということで、聞くところによると、世田谷の四警察署では千ぐらいの遺体袋というのが常時あるそうですから、六百五十五というものが集中的にどこかで発生しても一応足りるということになると思います。
それで、きょうその遺体袋というのを持ってきましたので、ちょっとお見せしたいんですけれども、遺体袋というのは二層になっています。一つは、この透明のこういう形の袋に遺体をまず入れます。広げませんけれども、その次に、外を覆う袋としてこういう中身が見えない形の袋になっています。これを運ぶときに僕は担架が必要じゃないかと思ったんですけれども、実はこの袋の袖のところに四カ所、こういう握り手がついていまして、この握り手を持って、四人でこれを搬送するということになっております。
主にこれは土木課の職員がやるだろうということになると思うんですけれども、実は東日本大震災のところの状況を克明に書いたルポルタージュが、石井光太さんが書いた「遺体」という本がありまして、この本によると、運ぶというのがいかに大変なことか、いかにつらいことか、要するに、きれいな形での遺体というのは、津波の場合ですから、比較的あったんですけれども、通常の地震の火災とか災害の場合というのは、それほどきれいな遺体という場合ではないわけです。
やっている土木課の職員が、これにも書いてあるんですけれども、つらいと、毎日やっているのはつらいといって、やっぱり所管がえを願うんです。
それで、じゃ、もう三日ぐらいたった段階から、全員がつらいと言い出したので、ほかのセクションの人間がかわりばんこに一日ずつやろうという形にしたそうです。
そうしたら、とんでもないことが起きた。要するに、最初からやっている人というのは、遺体が変化していく状況というのを毎日見ているわけです。
一日たつとこうなる、二日たつとこうなる、三日たつとこうなると。
でも、かわりばんこで来た人は、いきなり三日目の状態の遺体を収容するということで、もうひどいショックを受けるということがここに記載されているんです。
いかに遺体収容を早くしなければいけないかということがいろいろ書いてあるんですけれども、これは担当課長、所管の課長、荒さんにも読んでいただいたんですけれども、この感想をちょっとどうですか。想像していたことと、被害想定、また地域防災計画のことと考え合わせて、どう思いましたか。簡単にね。
◎荒 災害対策課長
私も、委員に紹介いただいて、この本を読ませていただきました。
想像はしているんですけれども、やはりこの関係者の方たちがこの本の中で語っているところ、これは本当に自分たちの思いや経験を語っているところが書かれていたんですね。
やはり今、委員おっしゃったように、職員だからという責任ではやりますけれども、なかなか本気で向き合っていくのは難しいのかなと。
ここの地域においては、結果として一人の職員だけが最初から最後までやっていて、ほかの方はかわっていたと。そのあたりの現実というのは真摯に受けとめて、今後の防災計画に反映していかなきゃいけないかなと思いました。
◆大庭正明 委員
僕はこの本を読んで、初めてわかったことというのがあって、一体こういう最初の災害で被害者が出た場合、またその遺体というものを収容する場所において何が必要なのかって、これは読んで初めてわかったというか、考えればわかることなんですけれども、ドライアイスが足りないんです。
圧倒的にドライアイスが足りない。遺体の保存のためには、真冬、もちろん三月十一日以降に発生した釜石での出来事が記載されているんですけれども、ドライアイスがないと、あの釜石、三月でもやはり変化をどんどんしていくということなわけです。
ドライアイスの手配、釜石の三月ごろの気候に起きるとは限りませんし、真冬の寒いときに起きるとも限りませんし、また地区会館の収容所のクーラーがきいたとしても、せいぜい十度ぐらいか十五度ぐらいにするのが精いっぱいだと思うんですけれども、ドライアイスの手配というのは、地域防災計画ではどのような位置づけにされていますか。
◎荒 災害対策課長
区は、協定を締結しています一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会にドライアイス、それからひつぎの要請をいたします。
また、東京都も同様に関係機関と協定を締結しておりますので、そこに要請して回していただくような形で考えております。
◆大庭正明 委員
この要請というので、一言要請するということで終わっているんですよ。しかし、その要請をされているところが、全日本冠婚葬祭互助協会というところなんですけれども、世田谷の場合は、そこの中の一社しか割り当てがなくて、メモリード東京という一社なんです。
そこだけに任せておいて本当に大丈夫なのかなという気はするんです。
区内のいわゆる葬儀屋さんというのは、電話帳で調べてみると大体四十社ぐらいあるわけです。
それは零細のものもあったり、大きな組織のところもあるかもしれませんけれども、そのあたりはもうちょっと詰めていかないといけないんじゃないですか。
本当にそれはできるのかどうか、少なくとも六百五十五に対するドライアイスはどれぐらい必要なのかということは計算しているんですか。
◎荒 災害対策課長
おおむね一遺体に対して一日五キログラムほどのドライアイスが必要だと考えられていますが、冬と夏でそれぞれの計算はしておりません。
◆大庭正明 委員
悪く言うわけじゃありませんけれども、地域防災計画では、この辺のことを詳細は全然詰めていなかったんですよ。
例えばドライアイスの量がどれぐらい、六百五十五に対して一日五キロ、ただ、これは五キロというのは多分冬を想定しているわけですよ。真夏だったら、当然五キロで足りるわけがない。そうした場合、大体のドライアイスの割り当ての量というのは、時期によって想定がつくわけですよ。その辺もやっぱり詰められていないということだと僕は思います。
あと地区会館に、さっき言った黒い遺体袋のままで置かれて、それで検視、検案が行われるわけですけれども、その後、そのままにしておくんですか。ひつぎというのは用意できるんでしょうか。
◎荒 災害対策課長
亡くなった方につきましては、まず警察と医師のほうで検視と検案を行います。それが終了するまでは遺体袋に入れて安置する形になりますが、その後につきましては、ひつぎが届けば、それに入れて安置するような形で考えております。
◆大庭正明 委員
多分検視、検案というのは、最初の七十二時間という三日間は救助、救出ということに全力を傾けるわけで、多分警察、また監察医務院のほうも人手をなかなか出してくれないだろうと思うので、想定からすると、検視、検案というのは三日目以降、または初日からあるということはあり得ませんから、少なくとも三日目ぐらいから始まるのじゃないかと思うんです。
世田谷の四署の警察署では、とりあえずそのチームは人員は整っているということだったんですけれども、それも七十二時間たってからじゃないかと僕は推察するんですけれども、その間、やっぱり大丈夫ですか。どう見ていますか。七十二時間ぐらいはかかると思っていますか。
◎荒 災害対策課長
最初の発災から三日間、いわゆる七十二時間につきましては、基本的に救命、救助を優先していく形になると思います。
その間に、遺体収容所のほうを開設準備等を始めますが、基本的に検視、検案を実際に始めるのは三日後以降だと考えております。
◆大庭正明 委員
ですから、最低でも初日に収容された方でも、現場に発見されないでいる遺体も、七十二時間はかかると。
そのまま、もしくは遺体収容所に来ればドライアイス等で冷やすことはできるけれども、それ以外、まだ未発見の、二日目に発見されるものはそれだけおくれる。
三日目以降に発見されるのは、さらにその状態がどんどん変化していくということが予想されるんですけれども、私が言いたいのは、またそこから先の話です。それだけでもドライアイスの手当ての部分、それからひつぎをどれだけ用意できるか。ひつぎがないまま、また火葬するということもなかなか難しいだろうと思うし、火葬許可が出たとしても、どうやって運べばいいのかという問題が出てくると思うんです。
震度六弱以上になると、交通規制がかかりますね。どんな規制がかかりますか。
◎荒 災害対策課長
まず発災後、一次的な交通規制ということで、基本的に災害救助活動にかかわる車、例えば警察、消防、それから自衛隊、それらの車しか環七より内側に入ることができなくなります。
その後、状況によりまして、警察のほうで判断しますと、第二次規制になりまして、そのときには応急・復旧活動に使用するような車両も通れるようになると。
遺体を運ぶとすれば、そのタイミングで運び出せるんじゃないかと考えております。
◆大庭正明 委員
ここに掲げているのが、いわゆる交通規制で環七の内側からは外に出ることは可能だと、だけれども、環七の内側に入るには規制が入って、環七の内側には入れないと。
環七の内側には特別の許可のあった救出とか、もしくは特別な許可がないと、一次規制の場合は入れないということですよね。
それで、二次規制になったら、いわゆる遺体の搬送もできるかもしれないということなんですよね。
環七の内側に入れないということが何を意味するかということなんです。
実は二十三区内のほとんど、戸田の火葬場以外は全部環七の内側に火葬場があるということなんですね、二十三区の中では。
こうなってくると、要するに、例えば少なくても、震災初日には既にもう病死されている方で火葬が予約されている人が、例えば一週間分とか、十日分というのがあるわけです。
しかし、環七の外側からはこの火葬場には入れませんので、事実上の火葬ができていないわけです。
環七の内側にいる人も一次規制の段階では、遺体をどこに置いてあるのかわかりませんけれども、遺体を移動することはできません。
ですから、この火葬場の被災状況もわかりませんし、どれほどの被害があって、どれほどの処理ができるのかというのも、これは想像の範囲でしかないわけですけれども、少なくとも交通規制というものがあって、環七の内側に戸田火葬場以外は全部使えないということなんですけれども、このことに関してはどういうふうに考えていますか。
遺体の処理というか、管理の最終の火葬の部分ですけれども。
◎荒 災害対策課長
一次規制のもとにおきましては、遺体の搬送車については対象外というのを警察のほうで確認しております。
ですので、その一次規制の間は、環七の中に遺体を乗せている車については進入はできません。
◆大庭正明 委員
環七の外側の、世田谷区は三分の二ぐらいがほとんど火葬場は使えないということになりますよね、そこでの問題は。
◎荒 災害対策課長
環七の内側……。
◆大庭正明 委員
外側。外側からは火葬場は使えないんでしょう、一次規制。
◎荒 災害対策課長
中には入れないということです。その間は運ぶことができないので、結果として火葬はできない。
◆大庭正明 委員
そうです。だから、僕が言っているのは、要するにこの一次規制というのが七十二時間ぐらいは続くだろうと、三日間ぐらいは続くだろうと。
ひょっとすると、四日間か五日間か、それは災害の程度、またはその環七の内側の状況によってどう解除されるかというのがわからない。
ですから、それはもうなってみないとわからないから、想像の範囲でしか言えませんけれども、少なくとも先ほど言ったドライアイス、ひつぎ、こういうものの手当てをしっかりしていなくちゃいけないわけなんですけれども、実際、今ドライアイスというのは、国内では生産が追いつかない。
今の平時の状況でかなりドライアイスの需要というのが高くて、外国から輸入しないとドライアイスの供給が間に合わないというような状態ではあるわけです。
ですから、そういう意味で、ドライアイス、この本にも本当に終始ドライアイスが足りなくて、土葬をしてしまうというような話というのも出てきます。
そこで、全体として、この辺の部分について、遺体の搬送から、遺体の地区会館への持っていき方、そこから三日間ぐらいかかって、やっと初めて遺体の検視、検案が行われて、それから引き渡しが行われる。
引き渡しが行われても、交通事情によっては規制がかかって、火葬場までたどり着けないような状況が何日間か続くと。
その間にもその遺体の変化というのがどんどん伴うということを考えると、遺体の最後の弔い方というのが、極限的にはやっぱり人間の尊厳の問題、人間としての振る舞いの尊厳の問題にもかかわってくると思うので、
ここの部分をやっぱり丁寧にやらないと、一般質問から申し上げているとおり、
要するに復旧復興の一番手前の、多分これは最初の三週間とか、四週間ぐらいの出来事になると思うんですけれども、そこの部分で非常にデリケートな問題だと僕は思うんですけれども、
この辺のところについて、やっぱり光が今まで当てられていなかったということを今回痛切に感じまして、一般質問として取り上げているんです。
これは交通規制のほうは、例えば東京都がやるとか、棺桶だとか、ドライアイスのほうも業者を通じて、業者を通じてということは東京都を通じてやる。
つまり区が直接情報を得るところもあれば、または東京都を通じなければ情報を得られない場合があって、これはごたごたになっていると思うんですけれども、その辺、総合的に副区長、どう思われますか。この計画の中で、やはりこの部分というのは、かなり未然の部分というのが多いんですよ。
◎宮崎 副区長
今回、一般質問の段階からお聞かせ願いまして、改めて、先ほど御紹介があった本、これについてもちょっと目を通してみたいと思いますけれども、今までやはり御指摘のありましたように、なかなかそこまでこの計画の中で盛り込まれていないというのが今の実態だと思います。
特に具体的にはドライアイスということの御指摘もいただきましたけれども、それ以上に職員の体制を含めて考えた場合でも、先ほどちょっと御紹介がありましたように、今、荒のほうからも感想を述べましたけれども、それが実態なんだろうと思います。
そこの部分までもやはり含んだ形にしないと、今回災害が起きたときの想定でこの防災計画をつくっていますけれども、よりリアルにしていかないと、いよいよやはり迫ってきている時期もありますので、その辺のところについては進化させていかなきゃいけないと、このように考えております。
◆大庭正明 委員
それから、やっぱり火葬場が環七の内側にほとんどあるというその東京都の都市構造というのが改めて、東京都ってこういう形で東京都をつくっているんだなというふうなことを考えると、
くしくも何で環七の内側だけを規制するのかというところの意味も、何で環七の内側だけに火葬場があるのかという問題も含めて、やっぱり都市設計の中でいろいろ考えさせるところが僕はあると思うんです。
環七の内側だけに火葬場があっていいのかという問題もあるわけです。
環七の内側だけシャットアウトして、そこだけよければいいみたいな形になって、環七の外側はもう置いてきぼりみたいな形で、待たなくちゃいけない、待たされる。
恐らく火葬場がもしあいたとしても、東京都の指示で、例えばこの場所に行くと、あなたは町屋に行ってください、あなたは四ツ木に行ってくださいとかって、多分その辺の指示が東京都から来ると思うんです。
多分災害は災害ですから、恐らく遺体とまたその近親者の人一人ぐらい、家族一人ぐらいを限定でそこに行って、とりあえず火葬してくださいという形になると思うんです。
その辺の時々刻々の説明というものの体制が、僕は遺族に対してどういう形でされるのかということも問うたんですよ。
やっぱりその辺についてもよくできていない。
地区会館にいる職員はネームプレートをちゃんとつけて、ネームプレートとか、役割、私はこの係ですとか、このことについてはと、窓口だけじゃなくて、窓口で座っているだけじゃないと思うんですよ。
多分いろいろ入ったり、出たりして、遺族の方はいろいろ聞くんだろうと思うんですけれども、その辺の工夫について一考されるべきだと思いますが、いかがですか。
◎荒 災害対策課長
地域防災計画等、マニュアル的にはそういう係の配置等については記載しているところなんですが、じゃ、実際にどの職員がついて、どのような御案内をして、どのように遺族の方に対して接するかとか、そのあたりは今後、具体的な内容を詰めていきたいと思っております。
◆大庭正明 委員
とにかくハードの建物は今これからどんどん整備していくということですけれども、
今度は、実際に起きたときに、職員がどういう働きをするのか。それから、被害者に関連する人たちに対して、情報が速やかに、やっぱり電車でもとまっていると不安なんですよね。
でも、これこれこれで十分ぐらいとまっていますとか、こういうことが起きていますと説明すれば、その人たちもわかる。
でも、災害において一番悲劇的な状況にある遺族の方々に対して、やっぱり適切、随時情報が行くという形にして、何かわからないと、待たされっ放しでどうなっているんだと、あれはこうなっているんだ、こうなっているんだという状況にならないようなスムーズな情報体制をまずつくっていただきたい。
とにかく六百五十五人が亡くなるという想定のもので、しっかりした計画、六百五十五人とは限りませんけれども、桁が違ったりすることは十分あり得ますけれども、それを一応要望して、私の質問を終わります。
○安部ひろゆき 委員長 以上で無所属・世田谷行革一一〇番の質疑は終わりました。
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