腸重積(ちょうじゅうせき)という腸の症状はあまり知られていない。乳幼児に起こる腸が重なってしまう症状で、手遅れになると死んでしまうほど危険度が高い。実は半世紀ほど前のことになるが私自身がこの症状であやうく死にかけた。たぶん3歳になる前くらいだった。近くの医院ではわからず総合病院に駆けつけいきなり手術となり命をとりとめた。執刀の医者があと数時間遅れたら腸の壊死が始まって手の施しようがなかったと言っていたらしいから、滑り込みセーフの人生はその頃からだったのだろう。
手術といっても開腹して腸を引っ張るだけで、別段悪くもない盲腸までも、ついでに“切っておきました”と言われたのには、後年になってひどい手術だなあと思ったものである。(現在では開腹手術以外の方法あり)
それでも一命をとりとめたので有りがたかったが。
この腸重責(ちょうじゅうせき)という症状は他人に説明するのが難しい。6日の朝日新聞に図解が示されていた。この図がなければ、言葉だけでは伝わらない。しかも腸重責(ちょうじゅうせき)と漢字で書かれても、読み方にせよも症状についても、経験者やその回りの人以外は滅多に知る機会はない。
記事では今でも、治療法がバラバラであって、今回学会がガイドラインを定め周知徹底するという。体験者としては喜ばしい限りだが、半世紀経てもこんな程度?と思う部分もある。
原因不明だが起これば時間との勝負で重症化しやすい。治療方法は確立していて神の手が必要なほどではない。ただし乳幼児だから状況を説明しきれない、表現できてもおなかが痛い程度しか言えない。あとは身近な親の判断力が効く。頻繁に発症するものではないらしいが、急に七転八倒するほどの経過にはならないので見過ごしがちである。乳幼児を抱える親にはちょっと知っていて損にならない知識である。