2019/09/25

児童相談所の内容についての議論

「世田谷区児童福祉施設の設備及び運営の基準に関する条例」という長い名称の原案が福祉保健常任委員会に提案(付託)された。

経緯を言えば、東京都の児童相談所が来年4月に移管(世田谷区としては新設という意識!)されるにあたって、その内容をあらためて世田谷区で規定する条例ということである。ただし慎重を期すために、現行の東京都の児童相談所の条例をほぼそのまま書き写した内容になっている。

しかし、例えば下記(青色)のような表現を借用することが現在の状況に適切に合っているだろうか?


懲戒に係る権限の濫用禁止)

児童福祉施設の長は、入所中の児童等に対し、親権を行う場合であって懲戒するとき又は懲戒に関し当該児童等の福祉のために必要な措置を講じるときは、身体的苦痛を与え、人格を辱める行為をする等その権限を濫用してはならない。


国(厚労省)は過去(21年前)、下記(赤色)の基準例を示している。

(身体的苦痛や人格を辱める等の精神的苦痛を与える行為の禁止)

子どもの援助に当たっては、身体的苦痛や人格を辱める等の精神的苦痛を与える行為を行ってはならない。


身体的苦痛や人格を辱める等の精神的苦痛を与える行為の具体的な例としては、殴る、蹴る等直接子どもの身体に侵害を与える行為のほか、合理的な範囲を超えて長時間一定の姿勢をとるよう求めること、食事を与えないこと、子どもの年齢及び健康状態からみて必要と考えられる睡眠時間を与えないこと、適切な休息時間を与えずに長時間作業等を継続させること、性的な嫌がらせをすること、子どもを無視すること、子ども本人の意に反した事項について執拗に聴取を行うこと等の行為があげられる。

ただし、強度の自傷行為や他の子どもや職員等への加害行為を制止するなど、急迫した危険に対し子ども又は他の者の身体又は精神を保護するために子どもに対し強制力を加える場合はこの限りでない。


条例としては、かなり長文となってしまうが、子どもを権利を主体とする条例である以上、誰にでも(子どもでも)わかりやすい基準にすべきではなかろうか。

その後、この厚労省の基準は消極的な表現に変わっていくのだが。それは民法822条で、親権は身体的苦痛や精神的な苦痛を与える懲戒権を認めているからである。国の法律でそういうことになっている。親権者は子の非行に対する教育のために、子の身体・精神に苦痛を加えるような懲罰手段をとることができる。もっとも、懲戒は子の利益(820条)のため、ひいては教育の目的を達成するためのものであるから、その目的のために必要な範囲内でのみ認められる。この範囲を逸脱して過度の懲戒を加えたときは、懲戒権の濫用となり、場合によっては、傷害罪、暴行罪、逮捕監禁罪などの犯罪を構成することもありえる)引用 wikibooks


この民法は戦前の家父長的な権限を、そのまま引き継いでいると言われている。

戦後に至っても、「鉄拳制裁」とか「スポ根ドラマ」や「教育的な暴力」が長らく社会の中で、黙認されていたので、民法822条は別に問題にならなかった。

しかし同じ社会の中で、実は「児童虐待」が蔓延し、大きな社会不安要因として民法822条が意識されるようになった。というより、民法822条と整合性のとれないまま、虐待防止の法律改正が進んでしまったといのが正しいのかもしれない。

その結果、後始末的な課題として、今後民法822条は見直されることが国会で予定されている。

世田谷区議会では(たぶんのどの地方議会でも)、条例審議の当日にいかなる発言は許されても、事実上、条例修正は不能である。

新規条例にしても既存条例の改正であっても、委員会では予告説明は最低でも1回、概要説明は半年から1年前くらいから行われる。(簡単に言えば条例提案の前までに議会の大体の理解説明は尽くされるという手順になっている)

今回の場合は、新規条例であるにもかかわらず、既存の都営児童相談所を引き継ぐという行政側の意識があったのか、逐条的説明は省かれて、「東京都と同じ作り」の条例ということで済まされてきた。私としても委員として許容していたことは反省している。

議会審議は慎重であるべきであるからこそ、唐突的な行動は、ふさわしくないことは承知の上で、敢えて、議事録に残す目的で上記赤色部分を委員会の中で発言した(つまりこっちの方がいいのではないかと)

行政側との委員会でのやりとりは、それこそお互いの意図をくみとれない応酬になることもあり、重要ポイントが逸れてしまうこともあり、実際には赤色部分を議事録に分散した形で残すことになってしまった。

結果として、質疑時間の範囲で事実上、意見を述べる形になってしまった。

態度表明の時間で何も発言しなかったのは、行政側提案(青色部分)に違法性も不当もみつからなかったからあであり、反対する根拠はなかった。

保坂区政の中で、この新区立児童相談所については、数少ない「共通感覚」で臨んでいる政策である。委員会の結論は全員賛成となった。