国の予算、総額92兆6千億円のうち借金(国債の新規発行)で賄うのが42兆8千億円。税収は43兆円しかない。
これが日本の現状である。収入(税収)と同じ借金を毎年毎年続けている。大丈夫なのだろうか、と誰しもが思う。
このあたりを若者の問題として取り上げているのがNHK「オイコノミア」という番組。
その番組で先日かなり決定的なことが語られていた。(1月22日放送「僕らがツケを払う・・・のか!?」)
それは2014年あたりが日本の財政破綻の分岐点になるという話。
以下はその問答。又吉とは芸人の又吉直樹氏、大竹とは大阪大学教授の大竹文雄氏。
又吉 その時(財政破綻)はいつ来るんですかね?
大竹 こればっかりはなかなか難しいんですよ。みんなが(国債は安全だと【注おおば)信じているわけですから。いつかというといろんな可能性があると思うんですけどひょっとすると早ければ2014年に財政破綻のきっかけを迎えるかもしれない。
又吉 2014年?もうすぐじゃないですか。
大竹 そうですね。だけど分かんないんですよ。
又吉 きっかけになる可能性がある、何かがあるという事ですよね。
大竹 あと1年ですよね。政府の日本の公債が1400兆円の金融資産を超えるかもしれない、と言われているんです。
又吉 いやー恐ろしいですね。
大竹 いま私たちはね、経済的に巨大な日本を潰すのか潰さないのか、ひょっとすると歴史的な分かれ道に立ってるのかもしれないですよ。
又吉 なるほど。・・・まさか日本がこんなに追い込まれている状況だとは思いませんでしたね。かなり不安になってきましたね・・・。【番組終了】
つまり、日本の国債はそのほとんどを日本人が買っているから大丈夫という「安全神話」すら数字の裏付けを失いつつあるということ。財務省が叡智を絞って日本人に(金融機関を通じて)日本国債を保有させるような様々な仕組みを作っても、それを買う元手となる金融資産以上に借金が増大すれば、誰が国債を買ってくれるのか?たぶん外国人が買うかもしれないが財務省のコントロールが効かないから、国債の価格がある程度まで下がらないと買わない。すなわち国債の暴落と金利の上昇である。
何がきっかけになるかは示していないが、財政破綻が進む過程をコンパクトにまとめたのが上の昨年9月28日の日経新聞コラム「大機小機」。そこで書かれているのは日本がたどり着く「禁じ手」のことである。コラム氏は日本と債務不履行に陥ったギリシャとの決定的な違いは日銀(中央銀行)からの低利借り入れという「禁じ手」が使えるかどうか、であり(ギリシャには独自の中央銀行を持たない)、公務員給与や社会保障給付の支払い不能に直面した政府はこれをやらざるを得なくなる、と云う。
要は日銀にお金をじゃんじゃん刷らせるということである。
デフレの今、モノがこんなに余っているのに、しかも需要がさっぱりないのに、どうしてモノの値段が上がるのか?と疑問に思うかもしれないが、貨幣価値が下がれば見かけ上は値段が上がることになる。
実はNHKでは国債クライシスについて、ちょくちょく深夜枠で警告を発する番組を作っている。例えば2011年7月29日放送の「真夏の夜の経済学」では国の借金地獄から逃れる方法を述べている。
そこでは当時は、まだ国の借金が924兆円(国債及び借入金)で、どうして国債は暴落しないのかということを経済学者の安田洋祐氏が解きます。
その第1の理由は、政府資産があるからということです。平成21年度財務省・国の財務書類によれば
土地 56兆円
有価証券 92兆円
貸付金 155兆円
現金預金 19兆円
出資金 58兆円
その他
----------------------
合計 647兆円
つまり実質まだ300兆円くらいの借金だということ、ただし資産がいつでも換金できるわけではなく、ムリに売ればそれこそ資産が暴落すると安田氏も認めている。さらにこの資産は現在目減りしており、借金総額が1000兆円を超えて上記のように1400兆円に迫ろうとしている時に、どれほどの「抑え」になるのか。さらに米国債券等を売却すれば世界経済に影響し売るに売れないこともあるだろう。
2番めにあげているのは、国債の95%は日本人が買っているから、というもの。ただしこれは上記「オイコノミア」で言っているように日本人の個人金融資産を超える国債をどうやって国民(実際には金融機関等を通じてだが)が買えるのか?これもあやしくなってきた。
3番めにあげているのは、日本はまだ増税余地があるから、というもの。消費税が他国に比べて低いということである。これも、経済低迷の中で税率アップしても税収が増える保証はない、という段階にきており、これもあやしい。
たった1年半前の番組にもかかわらず、借金の規模が大きくなると相対的に国債クライシスが起きない不思議な日本の状況の説明もあやしくなってきた。
ここまでは国債が暴落しない理由の説明なのだが、興味深いのは、この借金大国の状態を解決する「裏ワザ」を安田氏が披瀝していること。
何とインフレーション!ただし、インフレをどうやれば起こせるのか?またインフレの歯止め(コントロール)ができるのかが問題という、現在のいわゆるアベノミクスに対する疑問と同じようなことを安田氏は述べている。(どっちかと言えば安田氏は軽く語っていたように思えるが)
ただ単純に考えても、仮に物価が上がっても同時に収入が増えなければ生活は困窮する。また無理な需要を作っても、エコポイント需要が去ったあとの液晶テレビ不振のように、消費増税前の駆け込み需要の反動だってある。
確かにインフレによる借金の縮小というのは、例えば国の税収が500兆円くらいになれば過去の1000兆円の借金というのは、さほど大きな負担ではなくなる。ただしここで安田氏が指摘するのは、新規国債が発行できない、という決定的な問題である。
これは借り手にとってはインフレは味方でも、貸し手にとっては敵になることからもわかりやすい。となればプライマリーバランスをゼロ(新たな借金はしないでやっていける財政運営)にしなければインフレーションを起こせないということになるが・・・。現状のようなままで新たな借金をしつつ、インフレを起こすということは必然的に日銀の国債引受のようなことになってしまうのだが・・・。
次に安田氏が挙げた「裏ワザ」というのがデフォルト。もちろん推奨しているのではなく、国がそういうことをやり兼ねない、追い詰められればそうなる、というスタンスだろう。ナレーションではこう続く「かつて危機(国債暴落)を迎えた国々はその直前まで危機が近づいていることを認めようとはしなかった。世界で最も安全な金融商品の一つ国債、しかしその歴史をひも解けばデフォルト、つまり踏み倒しのオンパレードでした。」ちなみにナレーションでは「1998年にデフォルトを起こしたロシアでは市民の預金が封鎖、多くの銀行が倒産、通貨暴落、消費者物価が84%上昇、失業率は14%まで悪化、国民の平均賃金は23%減少」という。まあ、財政破綻しても国債暴落しても国民全員が生きていけなくなるということではないようだが。
そして番組(真夏の夜の経済学)の最後で
「国債の暴落は予測できないことが経済学で証明されている」これは経済学の真理だということを強調して終わる。
すでに日本人は「想定外」なんてことは言うのはよそう、「安全神話」を疑ってみよう、起こってほしくないことに思考停止はやめよう、ということを学んだはずである。国が借金して地方自治の多くの施策を支えている以上、そして国の借金を手際よく増やすことに熟練した政党が国家運営をし始めた以上、考えられることは地方議員レベルで考えなくてはならないと思った次第。