すごい人
大阪地検特捜部長が逮捕され、急転直下拘置所暮らしの身になる。これだけで並の小説よりストーリー性抜群。著者は記憶に新しい、無罪となった『村木事件』の責任者であり、フロッピーを改ざんした前田検事の元上司だった人物。逮捕におののく特捜部長の姿はリアルと言えばリアルだが、そんな人が特捜部長だったのかとも。「われわれ刑事司法にたずさわる者は簡単に懲役一年、二年というけれど、それを受ける者にとってそれがどれほど長いか思いを致した時、厳粛にならざるを得ない。これが教訓である。」なんてことを勾留34日目に悟られてもなぁー。さらに「司法というものは誠に恐ろしい権力である。人を極限に追い詰める権力である。人の生身を切りきざむ物理的な権力である。私はこの囚われの身になって初めて、身を拘束される辛さ、地位も名誉も財産も一切をはく奪される苦しさ、家族と別離する淋しさ、そして私はここに追いやった権力に対する言い尽くし難い憤怒というものを知った。」こんなことも勾留54日目に知ったとなると・・・。ちなみに村木氏は163日の勾留だったのであるが・・・。