2017/09/25

9月22日の一般質問原稿

2017年9月22日 一般質問 草稿   大庭正明

質問通告にある通り、「大規模災害時における遺体の埋火葬」について伺って参りたいと思います。

ここで大規模災害と云うのは、悲しいことですが、一時期に、多数の死者が発生する、極限状態を指します。

以下は、今から11年前に発表された当時の京都大学防災研究所の河田恵昭(かわだよしあき)教授らのチームが書いた「大規模災害時における遺体の処置・埋火葬に関する研究」という論文から引いたものですが

それによるとこう書かれております「数万人規模の死者の発生が想定されていながら、死者への対応についてはあまり検討されていない。・・・国や地方公共団体は防災対策強化に向けての取り組みを行っているが、そのほとんどは災害時にいかに犠牲者を軽減できるかということに力を注ぎ、犠牲となった死者への対応に関する議論は防災行政において禁断の領域となっている。」

「本論文であえて「遺体の処置・埋火葬」という領域に注目したのは、遺体の処置・埋火葬計画を立案することは復旧プロセスを円滑に進めることにつながると考えるからである」

私は、この論文を読み、虚を衝かれた思いがしました。

私たちは、NHKの番組などで、首都直下のシミュレーション画像を見て、建物が崩壊したり、電車が脱線したりと、大きな被害状況を目のあたりにしますが、その延長線上に多くの犠牲者が発生していることを、ともすると、見落としがちです。

ちなみに先の論文はすでに述べましたが2006年に出されたもので、2011年の東日本大震災の5年前です。

最新の首都直下地震での被害想定は東京都で約1万人、世田谷区の地域防災計画では死者数最大で655人と想定されています。

私たちはこの655人という死者数を地域防災計画の中でどう取り扱っているのか、ここなんです。

もちろん想定ですから、自然災害ですから、ケタ違いの差はあるでしょう。時間帯、風向き、震源からの距離等々で655人が65人に、あるいは逆に6千人にもなるかも知れません。

しかし、そんなことを言っていては、何も始まりませんので、とにかく、この世田谷区の地域防災計画に掲げられている655人という計画上の数字に対して、どのような対策がとられているのか、すでに遺体と想定されている655人の適切な管理と埋火葬はどう計画されているのか伺ってみたいと思っていました。

さて世田谷区民は、ここ5年間を通しても1年間に6500人前後の方々がお亡くなりになっています。

このことから考えれば、一ヶ月分以上の遺体の管理を世田谷区が大混乱の中で負うことになります。

おそらく通常なら、区役所の仕事としては、死亡届の受理、火葬許可証の発行等の事務がメインで、込み入ったことは葬儀屋さんがやっていると思われます。

それに比べて、大災害時においては遺体の管理方法は非常に複雑になります。

実質、災害時の遺体管理が始まるのは、遺体収容所が設営されてからとなります。

ではその遺体収容所の場所は?、と言えば、区内の13の地区会館になります。

ちなみに、計画では1つの地区会館の収容遺体数は平均すれば50体となります。もちろん平均などありえず被害度合いの激しい地域からどんどん埋まって行く感じでしょう。

遺体収容所では、検視・検案という警察と医療チェックが行われる場所とまた身元不明遺体、或いは遺体引き渡し所の部分に仕切られ、プライバシーの配慮が求められる施設となります。

例えば、私が不運にもガレキの下から遺体として発見されたとします。たぶん72時間は生存者の救助、救援が優先されるはずですから、そのまま放置されるかも知れません。

というより、遺体収容所が開設されないと、私は運ばれません。自宅から一番近い地区会館は上祖師谷地区会館となります。

遺体の搬送は災害対策土木部が行うことになります。私は土木部の皆さんのお世話になることになります。

私の人生の末路は、極めて明らかです。首都直下地震の犠牲者の655人の一人としてあるのです。

これ、仮の話ですよ。

実際、この問題、自分が遺体になった立場で考えると、非常にわかりやすいし、これまでの防災計画は先に述べた論文の一節ではありませんが、自分は遺体にはならないという根拠のない前提で書かれているから、どうも読んでいても実効性が疑わしいのです。

では、遺体収容所はどうやって開設されるのでしょうか、地域防災計画では、「災害発生後速やかに遺体収容所・設置・準備を実施、」とありますが、それは救援救助優先の72時間の前なのか、あとなのか、全く不明であり、そもそも情報収集の手順も不明です。さらには、そもそも地区会館が遺体収容所になることを区民は知っているでしょうか。

仮に、上祖師谷地区会館に遺体収容所が開設されても烏山方面からは、皆さんご存知のように榎の交差点から成城、祖師谷方面は極めて道が狭く交通の難所であります。つまり、遺体の搬送はクルマで行えない可能性もあります。

では、車で行ける他の地区会館には行けるのか、これも不明というか、決められていません。ここで申し上げているのは、なったらなった時さ、ではなく具体的に死者が655人という想定で計画が作られているのなら、その655人の遺体はどうなるのか、ということがキッチリ書き込まれていてこそ地域防災計画のはずです。

計画では、災害対策土木部が道路の通行確保も兼ねて、遺体の搬送を担うことになっていますが、これは遺族等による搬送が困難な場合ということで、道路さえつながれば、自家用車で遺体を運ぶこともできます。

しかし、さきほども申し上げた通り、上祖師谷地区会館の道路事情を考えれば、私は災害対策土木部が持ってきた遺体袋に包まれて、途中からおそらく担架で通行困難地を経て上祖師谷地区会館に運ばれる、ことになるようです。

一つの地区会館に、時間のずれはあるにせよ、道路が開通すれば、何十台のクルマと遺族が集まります。この災害において一番悲嘆の度合いの高い人々のはずです。

私にしても、遺体である私を家族が上祖師谷地区会館にうまく運べても、それだけで、じゃあね、と帰る可能性は無いとは言えませんが、いろいろな手続きが遺族にはあります。ましてや、そこから離れられない家族も大勢集まる可能性もあります。これだけでも課題が多く残された計画であることがわかります。

実はこの段階では、私は事務手続き上は、生きているのです。災害死の場合、警察等による検視・検案を経なければ死亡届けは作成されても、遺体収容所では受理されないのです。

しかし、東京都が作成している、マニュアルでは遺体収容所において受理することになっています。

区では、総合支所で受理するとなっており、バラバラです。このことだけでも、明日、首都直下が起きたら、混乱必至です。

ことほど左様に、所管に一つ一つ尋ねても、その都度、東京都に聞き返さなければならない状況が実態であり、それは所管の問題というより、東京都の防災計画がまさに未熟であることが最大の原因のようです。

しかしこの問題は、残された、或いは生かされた多数の遺族の未来に重大な影響を及ぼす問題です。

実は、この先、私の遺体はどこで火葬されるのか、火葬許可証までは出るのですが、そう簡単に火葬はされない状況があるのですが、その問題は時間の関係で、決算委員会で、やれたらやります。


とにかく、この問題、一回の一般質問で回答が揃うレベルではないので、今後続けてやりますが、大規模災害時の多数の遺体管理については、リアリティーが感じられないのが現状だと申し上げて、壇上からの質問をおわります。