2014/05/15

日本の教育は世界のトップなんですけど・・・

 オランダ帰りの保坂区長は、公費で取材旅行を行い、その成果を朝日新聞デジタルのコラムに5月13日より保坂展人オランダ報告と題して発表している。こちら→太陽のまちから
 まあ、なんとツラの皮が厚いのかと、ため息も出ないほど嘆かわしい事態である。しかも内容も大きな事実誤認からスタートしているのだから、報告の価値は一銭もないに等しい。
 まず、太陽のまちからのコラム。表題の「世界一幸福な国の教育」からして、オランダの教育を視察する意義があるように思わる書きぶりだ。
 さらに、本文ではこう書いている。「5月上旬、私は、『子どもの幸福度世界一』(2007年、2013年/ユニセフ調査)とされるオランダの教育事情を視察してきました。」
 報告の導入部にこう書いてあると、いかにもオランダの教育は世界一で、日本も見習うべきことがあるのかもと、思わせる。


 では、保坂区長が云う『子どもの幸福度世界一』(ユニセフ調査)とされるオランダの教育事情・・・のユニセフの調査って何なのだろうか。
 実はこのユニセフの調査(2013年)は漠然とした子どもの幸福度を比較しているのではない。「物質の豊かさ」「健康と安全」「教育」「日常生活上のリスク」「住居と環境」という5つの分野から具体的な項目にしぼり比較している。

 例えば「教育」の分野では「就学前教育就学率」「高等教育就学率」「ニート率」「PISAテストの平均点」の4つの項目の比較検討を行っている。

 その結果、何と日本は「教育」と「日常生活のリスク」の分野ではトップ、世界一なのである。

 上記はユニセフが発表した日本語訳の「先進国における子どもの幸福度」に掲載されている順位表である。拡大クリックしていただければわかるが、日本は総合順位では6位であり、確かに1位はオランダである。
 しかし「教育」と「日常生活上のリスク」では日本はトップであり、一方「物質的豊かさ」では21位、「健康と安全」は16位、「住居と環境」は10位となって、総合順位では足を引っ張っている、というのが実情である。

 となると保坂区長の「子どもの幸福度世界一」のオランダの「教育事情」を視察するというのは、つながらない。オランダが日本より優れているのは「物質的豊かさ」「健康と安全」「住居と環境」の3分野であり、視察するとすれば、そちらでなければ意味がつながらないだろう。


 2013年のユニセフの報告では、日本の教育は先進国の中で1位トップである。もちろんそれだけで教育の質がどうのこうのと断じられるはずもない。それはひとつの見方であり、単に傾向を示すに過ぎない。別段、オランダの教育に学ぶ点がないなどとは思わない。
 しかし、ユニセフの調査を「動機」としてオランダに関心を持つなら、子どもの置かれている「物質的豊かさ」「健康と安全」および「住居と環境」について視察するべきではなかったのか、というのが素朴な疑問である。
 最初に「オランダの教育」ありきの視察だったのだろう。


 実は保坂氏個人のブログにコラムを連載するだけではなく、私的シンポジウムにもオランダ公費旅行の成果がつぎ込まれているから、公私混同は決定的である。
 

 「オランダと日本の公教育を考える 良い教育とは何か」というシンポジウムを5月17日に行われる。主催はNPO法人EFC。保坂区長が帰国したのが5月9日である。あまりにも出来過ぎではなかろうか。要は、保坂区長がオランダに行かなければ、このシンポジウムは“迫力”に欠けただろう。見てきたことで“当事者”という立場や“専門家”を装えるからである。そして関わっているのは「保坂のぶと事務所」という点に注目。さすがに教育長は「こぴっと」関係していない。