近ごろ話題の書「炭水化物が人類を滅ぼす」(夏目睦・著・光文社新書)は、「現在の栄養学(食の科学)が、じつは科学から程遠いところで成立しているから」結果として人類は滅びるという話である。
著者の言いたいのは「間違った栄養学が人類を滅ぼす」ということであろう。そしてその“立証過程”が実に面白い。次の一文などハッとしてしまう。
「体温は最高でもせいぜい40度Cであり、この温度では、脂肪も炭水化物も「燃焼」しない。つまり、人体内部で食物が「燃えて」いるわけがない。そもそも、細胞内の代謝と大気中の燃焼はまったく別の現象である。」(P167)確かに言われてみればそうである。ここから栄養学が、物理学的燃焼を栄養学的カロリーに置き換えている問題をさまざま論証している。
そういえば、日経新聞に糖質制限食はいろいろ問題視する向きもあるが、調査したところ逆に糖質制限をした方が、心血管疾患で死亡する危険性が低く、特に女性において顕著だったという記事があった。これなども著者の主張を裏付けるものだろう。
生活習慣病が現在の医療費増大の根源にあるとすれば、食生活の改善とか適度な運動以前に、ひょっとして“食生活の常識”から問いなおして行く必要があるのではなかろうか。