■現在公開中の「ゴールデンスランバー」を観た。内容は権力側(警察)によって首相暗殺犯に仕立て上げられてしまった男の話である■映画の中で、新聞もテレビもウソばっかり伝えている、といった主人公のセリフは今の世相とリンクして生々しい■主人公には覚えのない証拠が次々にマスコミによって報道され、誰も信じてくれないなか、昔の友人たちが様々な協力をする、というストーリー立てだが■とにかく権力側の犯人に仕立てあげて、徹底的に捕まえるという姿勢が凄まじい。もちろん娯楽作品ではあるが、故意に世論を操作することは意外に簡単なのかも知れない、とも思ってしまった■例えば主人公を犯人に貶める道具は監視カメラに映った映像である■それが犯行の証拠として自然な形でマスコミに乗った瞬間からまぎれもない犯人になってしまう。しかしそれは、ねつ造である■全編通じて、世の中はイメージだ、というメッセージがある。確かにイメージは本質を映す場合もあれば、逆に作られたイメージでは虚像にすぎない場合もある■原作は長編であり、映画では、犯人に仕立てられた男の視点だけを映像化している。それでも原作に忠実な作品になっている。ラストシーンは映画文法に沿った好きな終わり方で楽しめた。