2011/03/15

津波災害 河田惠昭著 岩波新書

情報が増えるにつれ、津波の被害が想像を超えるものであることがわかってきた左は昨年末に出された。そこには「沿岸の住民がすぐに避難しなければ、近い将来確実に起こると予想されている、東海・東南海・南海地震津波や三陸津波の来襲に際して、万を超える犠牲者が発生しかねない、という心配である。・・・私が読者にとくに伝えたいことは「避難すれば助かる」という事実である。」このことを昨年12月17日発刊の岩波新書で著者は述べている。まさにここで述べられていることが現実に起きている残念なのは、この本の想定以上のことが起きている事である。特に三陸沿岸については沖合の深さが異常に深く、そのことによって津波の増幅装置になっている事で、三陸沿岸は「宿命的な」津波常襲地帯と明言しているわずか3ヵ月前に出されたこの本を、それぞれの自治体の担当者が読み、備えていたら・・・もちろんこの本は予言書ではなく科学的に説明しているしかし更に残念なのは、以下の部分である「津波の大きさを低減させるには、湾口の大水深部に津波防波堤を作るのが一番効果的である。岩手県の釜石市や大船渡市は際立って安全になっている。」思わず目を疑うような一文である我々は現在の釜石市や大船渡市の状況を知りつつある。決して釜石や大船渡が津波対策をしていなかったのではなく、高レベルでの安全策が施されていたのであるつまり、月並みな言い方だが、今回の巨大津波はそれほど大きかったとこの本で著者が徹頭徹尾繰り返し主張しているのは「避難すれば助かる」ということである。確かに「避難する場所」がある地域はよいとしても、都市部ではそうもいかない。