8月22日朝日夕刊の社会学者の岸彦氏のコラム(?)にはビックリした。諧謔を弄したつもりかも知れないが、作家としても著名な人物が、こんなことを言ってしまって、どうすんの?
「私がぼんやり考えていることも、間違いが含まれているだろう」「繰り返すが、私は難しいことはわからない」と予防線を張って、際どいことを言うのは学者さんとしてどうなのだろう。
特に最後の「みんな気をつけよう。私たちは、騙されてるだけかもしれないのだ。ほんとは財政を緊縮させなくてもいいのに、そっちのほうが都合がいいから、そう思わされてるだけなのかもしれないよ。」という子供っぽい言い方が、「ハーメルンの笛吹き男」のようで、もはやホラー。
いったい、どこの政府が「緊縮財政政策」をしているのだろうか。日本は現在、放漫財政の真っ只中にいる。
7月31日の日経「大機小機」によれば、「政府は今年の骨太方針で、民主党政権以来掲げてきた『基礎的財政収支の2020年度黒字化』という財政健全化目標の旗を降ろした」とあるように、財政緊縮など事実誤認もいいとこだ。
このコラム(?)を読んで、一番喜ぶのは安倍首相だろう。まさに「我が意得たり」と。「お金がないに騙されるな」と一番最初に叫んだのは誰あろう、総理大臣に、決まっている。
異次元の金融緩和を進める一方で、「国の借金」という毎年恒例の記事が最近、ほとんど見かけなくなったのも、マスコミの忖度か?
ゼロ金利政策というのも、もはや最低限の資本主義の国家運営の術ではない。この社会学者に問いたい。「お金がないに騙されるな」というなら、可能な限り個人的に大借金をしてみればいい。実質金利は史上最低水準である。社会学者としてまさにフィールドワークの当事者となって、「こんなに楽しい借金ライフ」を実践して欲しいものである。
お金がないことを理由に、権力を振るっている人がいるとすれば少なくとも地方自治を誤解しているとしか、言いようがない。