津波災害 河田惠昭著 岩波新書
■情報が増えるにつれ、津波の被害が想像を超えるものであることがわかってきた■左は昨年末に出された。そこには「沿岸の住民がすぐに避難しなければ、近い将来確実に起こると予想されている、東海・東南海・南海地震津波や三陸津波の来襲に際して、万を超える犠牲者が発生しかねない、という心配である。・・・私が読者にとくに伝えたいことは「避難すれば助かる」という事実である。」■このことを昨年12月17日発刊の岩波新書で著者は述べている。まさにここで述べられていることが現実に起きている■残念なのは、この本の想定以上のことが起きている事である。特に三陸沿岸については沖合の深さが異常に深く、そのことによって津波の増幅装置になっている事で、三陸沿岸は「宿命的な」津波常襲地帯と明言している■わずか3ヵ月前に出されたこの本を、それぞれの自治体の担当者が読み、備えていたら・・・もちろんこの本は予言書ではなく科学的に説明している■しかし更に残念なのは、以下の部分である「津波の大きさを低減させるには、湾口の大水深部に津波防波堤を作るのが一番効果的である。岩手県の釜石市や大船渡市は際立って安全になっている。」思わず目を疑うような一文である■我々は現在の釜石市や大船渡市の状況を知りつつある。決して釜石や大船渡が津波対策をしていなかったのではなく、高レベルでの安全策が施されていたのである■つまり、月並みな言い方だが、今回の巨大津波はそれほど大きかったと■この本で著者が徹頭徹尾繰り返し主張しているのは「避難すれば助かる」ということである。確かに「避難する場所」がある地域はよいとしても、都市部ではそうもいかない。