2016/08/20

脱原発区長はなぜ得票率67パーセントで再選されたのか?その2

上は8月16日の朝日新聞に載っていた保坂氏本の広告。

内容については手にして戴くとして、ここではこの広告のリードがいかに空虚で錯覚に満ちていることに触れたい。

この広告の保坂氏の写真の左下あたりに、本のエッセンスらしいことがが5つほど示されている。(小さくて読みづらいけど)

その中の一つ。「子ども・教育関連予算を711億円(H27年度)と10年前の2倍に増額した」と書かれています。しかしこれはどういう事実なのでしょうか。


実際、H27年度(右端)から過去に遡って、子ども関連予算を検証してみると以下のようになります。


グラフの右端がH27年度予算で711億円。そこから左へ遡ること10年前が黒い棒のH17 年度で、349億円です。確かに2倍になっております。

しかし、グラフ全体を見ての通り、保坂区長の前の熊本区長の時代(5年前)でも、10年前の2倍は達成していたのです。(H23年度の668億円とH13年度の275億円)

保坂区長になって、グラフで言えば、右からの4本の青い棒ですが、子ども関連予算は実際にはダウンしていたのです。

任期中3年間は子ども関連予算は抑えられていたにもかかわらず、最後の選挙直前だけビヨーンと増やす手法。それをもってして、さも、自分だけの功績のごとく錯覚させる手口は、区民を目隠しして保坂ワールドへ誘なう基本的なテクニックです。

こういう小手先の弁術には長けている保坂氏。決して大きなウソはつかないが、小さい錯覚を積み重ねることによって全体の事実を自分の都合の良い方へ導く“論法”は天下一品と言って良いでしょう。

広告のエッセンス部分のもう一つをあげれば、「1期目4年間で認可保育所を24カ所、認証保育所を19カ所増やした」とありますが、それでは4年間保育待機児ワーストの世田谷区の現実はどうなのでしょうか。

また「赤字続きだった区の財政を22年ぶりに「借金ゼロ」へと黒字化した」とありますが、これは行政の内部からみると、単に、すべき仕事を先送りしていれば、出費は減り、入りは貯まるということに他なりません。

災害対策に直結する新庁舎問題に対して贅沢庁舎(現庁舎を保存しつつの新庁舎案)にこだわり、問題を先送りしている現状、災害対策に不可欠な生活道路への投資へのためらい等々、区長としての決断の遅れが、皮肉にも黒字化の原因になっているのです。

最後に、誰も注目しない保坂区長という現実があります。だから自分で本を書き、自分で判定し、自分で絶賛するという哀しい三役をこなさなければならないのです。

仮に世田谷区政が褒められたとすれば、それは過去の区政のレガシイによるものであり、現区長とは関係がありません。

そのためか、本著の後半は、これまでに何度も書かれた保坂氏の中学時代の武勇伝の繰り返しで、またその話かい、と少々シラけてしまうかもしれませんが、知らない方は相模原市からわざわざ千代田区まで越境入学をしていた中学時代の話は世田谷区政とは関係ないけど新鮮かも。

2016/08/18

脱原発区長はなぜ得票率67パーセントで再選されたのか?

妙なツクリの本が発売された。

もちろん重箱の隅をつつく程度の話だが、チリも積もれば山となるの例えのごとく、夥しい錯覚の連射の中に保坂区長の虚妄が隠されているから書かざるを得ない。

この本の表題からすれば、観察対象は保坂区長(候補)の選挙戦のはずと買い手は思うだろう。簡単に言えば、保坂候補はなぜ高得票率で当選できたのかという謎解き、分析本だろうと。


当然、分析者は第三者というのが買い手の前提であろう。

しかしである。妙なツクリというのは、著者が保坂展人氏本人であり、分析も本人が行っている点にある。

要は自画自賛本の典型ということである。

ただし、実際にはロッキング・オンの渋谷陽一氏によるインタビューという内容になっている。

まあ何でもありの保坂氏のことだから今更、驚くことでもないが、この手の本のツクリとすれば、インタビュアー渋谷陽一という記述が表題にあるはずであり、まさに得票率67パーセントで当選した分析は渋谷陽一氏が行ってこそ、客観性が形式的にこそ付与されるものだろう。さらには相手陣営への取材がなければ本来の客観性は保てないはずである。

しかしながら、この本では一方的に保坂氏がインタビューに答え、自分で分析し、結論づけているのである。であるならば「私はこうやって勝った」というのが素直な表題のつけ方であろう。

客観性を装いつつ、一方的な価値観にすでに踏み込んでいる、というのは保坂氏の得意技(難点?)である。(庁舎問題における迷走などはその典型で、区民の代表的な声に耳を傾けることなく、勝ってに独走し、自ら隘路に陥るという時間の浪費の繰り返し)

最後に、この本を手にする前提として、現職区長は選挙に強いという事実を知らねばならない。

区の催事から広報から入学式から卒業式からその他の印刷物、お祭り、集会等で現職区長自身も名前も露出し放題である。それが4年も続けば知名度は飛躍的に高まる。それは全国の自治体でも同様である。

著者の保坂氏は得票率67パーセントを、こんなにも高い得票率と確信しているようだが、果たしてそうなのだろうか?

昨年の4月の同日に行われた区長選挙は11区ある。現職区長は全員当選している。新人が当選したのは現職が引退した区である。



実は保坂氏は現職区長の割には得票率が低いのである。得票率は立候補者数によっても左右されるが、それを割引けば保坂氏の得票率は区部の中でも低い部類なのである。

得票率だけに注目すれば、この本の表題は他区と比べて「現職区長なのになぜ低得票率67パーセントで再選されたのか?」ということにならないだろうか。

モノの見方は多様かつ多面的である。すでに昨年の対立候補の名前も顔も記憶にない区民も少なくないと思うが、同様に保坂区長の実績を言える区民もどれだけいるのだろうか。

知名度の差を、支持率の差のようにすり替える魂胆があるとすれば、それは違うなぁ、というのが率直な感想である。まあ、ミニワールドの権力者である保坂氏らしいが・・・。

●ちなみに、以下は読売新聞のネットから





委員長からの残暑見舞い?

前回ブログより、よりわかりやすい記事が都政新報(行政関係の業界紙)に!

改めて、今回の報告書は、これまでの保坂区長の考えの甘さや、行政感覚(危機管理センス)の著しい低さを指摘している。

例えば、保坂区長の新庁舎に対する考えは昨年3月(区長選直前)に策定した所謂、「中間まとめ」に示されているが、今回の報告書は、その「中間まとめ」の欠点を具体的に指摘している。(と記事から読める)

すなわち記事によると、「今回の報告書では基本的方針として、中間まとめで打ち出しが弱かった災害対策機能の強化に加え、区民の利用しやすさへの配慮、円滑に業務を行うための機能性と効率性及び柔軟性の確保、環境負荷の低減を図るよう強調した。」

これは当時から議会各派が述べていたこと。

つまり、保坂区長は首都直下がいつ来ても不思議ない状況下にありながら、昨年の3月に至るも、災害対策機能の強化は重要視していなかった、ということである。

熊本地震をもってして本庁舎機能の重要性を区長が認識したとすれば、世間知らずもいいところだろう。(実際はそうなのだろうが・・・)

さらに8日の区長記者会見で記者の以下のような質問に対して保坂区長は明確に答えている。

記者:本庁舎整備についてお聞きしたい。本日この後、報告書を受け取るということだが、その中に現庁舎の空間特質を継承するということが盛り込まれると思う。2月の区議会定例会では、自民・公明両党の議員が「私たちが継承しなければならないのは中庭の景観ではない」と言っている。自公が議会の過半数を占めているわけだが、議会に対しどのような説得をするのか伺いたい。

区長:議会でも、「とにかく早く整備をすべきである」、「災害対策について強く留意を求める」など、それぞれ意義のある庁舎についての思いを言われていると思う。ただ、委員会の議論では現庁舎については空間特質を継承するとされており、現存する庁舎をそのまま残せとは言っていない。空間特質という言い方には幅がある。後段部分は、合理的な事業計画がありうるならば、という限定付きで現存する庁舎を保存することも考えるべきだということである。

「合理的な事業計画がありうるならば・・・」というのは世間知らず区長への、委員長からのささやかな残暑見舞い程度のものであろう。

2016/08/12

本庁舎整備の基本構想検討委員会の報告書


●8月8日に区長に提出された報告書を読む。たぶん何を言っているのか、わからないだろう。理由はすべての可能性を盛り込んでいる体裁となっているからである。つまり読み手の立場によって都合よく“響く”文章構成となっているからである。

●肝心な部分は41ページに詰め込まれている。赤字は引用部分。

(3)建設手順について
○仮設庁舎について
外部にまとまった仮設庁舎を確保できれば、効率的な工事が可能になり、工期短縮なども見込むことができるが、現時点では、適地を見出せていない。そのため、建設手順では、外部に仮設庁舎が不要な案とする必要があるが、今後、引き続き仮設庁舎の確保の可能性について検討していく。(P41)

●上記の表現はもう2年前から議会で再三指摘している部分。「・・・建設手順では外部に仮設庁舎が不要な案とする必要があるが・・・」

●不要な案とする必要があるなら、それ以下の表現は、それこそ不要だろう。


○工期について
近隣住民への影響、施設利用者への影響、職員への影響を最小限に抑えるためにも、工期は短縮していく必要がある。可能な限り2期工事(5年程度)で終わるよう、民間の技術も活用しながら、工期短縮に向けて様々な手法を検討していく。(P41)

●ここでも遠慮がちな表現ながら工期は約5年と明示している。


(4)現庁舎等の空間特質について
50年以上区民に親しまれてきた本庁舎、区民会館、広場等の空間特質をできるだけ継承する計画とする。さらに、本庁舎等の課題を踏まえ、求められる機能、規模の確保と最も合理的な事業計画(コスト削減、工期短縮等)が可能であれば、現庁舎等の活用も考慮する。(P41)

●空間特質とは簡単に言えば、前川建築の雰囲気のこと。それは継承していきましょう。ただし現庁舎等の活用についてはコスト削減、工期短縮等が可能であれば考えてください、と述べている。

●冒頭の仮設庁舎にこだわるのは、仮設庁舎ができなければ(工期短縮ができず)現庁舎の活用は諦めざるを得ないからである。

具体的な配置や構成については、基本構想において示された条件に基づき、設計者からの提案を受けて、最終的に決定することとする。(P41)

●報告書では庁舎面積、必要な機能、工期、予算規模をまとめている。あとは“設計者の腕”によるということであろう。

●ただし、アンビルトの女王と称する建築家が存在したように、設計図では可能でも、それを建設する施工業者がいるかという問題もある。

●実際、委員会の中で委員長は何度も前川建築を残すことは難解なパズルを解くようなもので果たして・・・という趣旨の発言(警鐘)をしている。

●さて、報告書は保坂区長のもとで基本構想案がまとめられる。区長もいい加減、現実的な対応に徹する時期に来ている。「世田谷YES」が今期のウリなのだから・・・。