2014/07/06

社会保障の岩盤改革

 来年度から、いわゆる小規模認可保育園(定員6人から19人までの小規模保育)が誕生する。認可権は世田谷区。参入は自由であるべきで、参入後の運営チェックは厳しく、というのが基本ではなかろうか。しかし、区が考えている参入条件には「社会福祉法人・学校法人以外の者に対しては、経済的基礎、社会的信望、社会福祉事業の知識経験に関する要件を満たすことを求める」とあり参入障壁を設けている。(国の通達がこうなっているとか・・・)

 国の通達は日本全国の自治体に向けられている。その全国の自治体の中で世田谷区は保育待機児ワーストワンという状況にある。

 全国と同じでは、世田谷区の保育待機児問題は解決しない。しかも社会福祉法人・学校法人以外は参入障壁となる「経済的基礎」、「社会的信望」、「社会福祉事業に知識経験」の審査基準を世田谷区は定めていない。というより、「社会的信望」なんて、どのような尺度があるのだろうか。

 もはや、昭和20年代の制度設計(措置制度)を多く引きずる社会福祉法人の発想だけでは世田谷区の保育待機児解消はできないだろう。
 厚労省では社会福祉法人制度の見直しも考えている。「社会福祉法人の見直しについて」(平成26年6月16日)

 この日本で需要があるのに供給が何年も間に合わない、ということはあるだろうか。モノでもサービスでも溢れている。しかし社会福祉の分野では保育所も特養ホームも慢性的な不足状態である。その運営のほとんどが社会福祉法人。現状の社会福祉法人を取り巻く環境では、質や生産性の向上につながる改革はできない。それでいて社会福祉に投じられる国の税は莫大である。いずれその税も続かなくなる。

 来年度からの小規模保育を含む「子ども・子育て支援制度」という新たな制度は消費税10%を財源としている。それでも4000億円の財源不足で解決していない。さらにその消費税10%も決まった訳ではない。経済状況を見て判断すると政府は言っている。

 景気が悪くて消費増税を見送れば、「子ども・子育て支援制度」は赤字国債頼み。

 景気が悪くても消費増税を断行すれば、経済自体が落ち込み赤字国債頼み。

 どっちにしても景気がうまくいかなければ日本の社会保障は制度疲労を一気に噴出する。

 その前に、質や生産性の向上につながる改革を社会保障に導入しなければならない。が、政府は違うことに執心している。目の前の課題に取り組まない政府が果たして国を守れるのだろうか?