2013/08/21

国家の粉飾

  8月21日の日経朝刊、経済教室に“行政のお家芸”ともいうべき数字トリックがあって、日本の社会保障もそこまできたかと嘆かざるを得ない。

 筆者の学習院大学の鈴木亘教授によれば、年金財政について、「相変わらず『年金は100年安心』という虚構の上に立っている」と述べ、その“証拠”として年金の「運用利回りを今後100年近くにわたって4.1%もの高利回りに設定するという『粉飾』をしている」というのだ。
 (もちろん1000兆円もの借金を抱え、国債の暴落でもあれば4.1%の高利回りも可能かもしれないが、そうなれば、それ以前に運用自体が破綻し、貨幣価値の下落により、手にする年金は紙くず同然になるかも知れない。)

 鈴木教授の言いたいことは社会保障全体の将来像について「何ら定量的な評価をしていない」ということである。

 行政とすれば、「定量的な評価」をすれば年金財政が破綻していることを認めることになる、だから非現実的な数字をデッチあげてでも、当面国民を安心させて、そのうち経済も良くなってどうにかなるだろう、という、官僚制特有の「先送り楽観論」である。

 国民からすれば、甘い夢に浸っていられれば越したことはないが、現実に年をとって高齢者となり病み勝ちとなり就業機会も少なくなってから、アテにしていた年金がパァですと言われたら、そちらのほうが残酷である。

 官僚制特有の「先送り楽観論」は「定量的な評価」を無視することによって成り立っているが、国民にすればことごとく「夢を見させて残酷な結末」に終わっている。

 「定量的な評価」或いは「定量的なデータ分析」とでも言い換えられるが、もちろんこれが万能だとは言えないが、政策的な判断として欠かすことはできないだろう。

 日本の財政はすでに、外から見れば“粉飾”の段階に来ているのではないかと思う。何かのキッカケで、バレたら、国債は暴落し、税金で食べている人たちを直撃するだろう。或いは税金によって維持されている社会保障関連の人たちは経済的に行き詰まるかも知れない。

 バレないうちに成長戦略とやらが一発逆転を果たせば良いが、実はこの成長戦略も「定量的なデータ分析」無視の「夢だけ先に見せて」という、いつものパターンで、どうやら結末は想定できそうである。下の記事は朝日の21日朝刊。ドイツ連銀では結末を見越している。