2013/01/31

近代システムの劣化

 3.11以後の復興が進まないのは財源が足りないせいだろうか?
 1月26日の日経夕刊に載った建築家の内藤廣さんのインタビュー記事は今の日本を考えさせる。
 「復興が進まないのは、戦後の社会システムの問題」と氏は言い切る。
 「憲法の『私の権利』に関する条項には『公共の福祉に反しない限り』という文言がある。東日本の被災地では『公共の福祉』を前面に出さざるを得ない。だが、これは権利の制限につながるため、長く真正面から議論するのをためらってきた問題。みんなのため、町のためとはどういうことなのかを、おざなりにしてきたツケをいま払っている感じがする」
 内藤氏は、東日本大震災後にみんなが一生懸命取り組んでいるにもかかわらず、復興が進まない状況に、法律が気になって、復興に関する法律、土地の権利を規定する民法、そして権利を保障する憲法の3つを行った来たりして調べた結果、上述のような結論に至ったという。

 勝手に理解すると、数多くの「権利」が社会の中で「最適化」されずに、未解決態のままで、そのために多くの人々が不合理な状況に置かれている、ということになのだろうか。世田谷区では今後20年を見据えた基本構想作りに懸命だが、“今をどう見る”という作業を飛ばして急いでいるように感じる。

 

火だね?

 昨日の国会質問で維新の平沼氏が時間切れで「脱原発」の質問をしなかったことがニュースになっている。
 質問したことならともかく、質問しなかったことが取り上げられているのだからユニークだ。記事によれば、その部分は特に橋下氏がこだわって修正を求めた箇所。「段階的に原発依存からフェードアウトし、次第に脱原発を達成することが望ましい。」この部分をそっくり言わなかった。
 ベテラン議員が時間切れ、というのは不可解。事前に原稿を読めば、わかること。(普通は字数で目安つけるけれど)
 かつて平沼氏らが所属していた政党を「思考停止」と断じた橋下氏。まさか「質問停止」で応じたワケでもあるまいが・・・。

2013/01/29

財政破綻

 国の予算、総額92兆6千億円のうち借金(国債の新規発行)で賄うのが42兆8千億円。税収は43兆円しかない。
 これが日本の現状である。収入(税収)と同じ借金を毎年毎年続けている。大丈夫なのだろうか、と誰しもが思う。
 このあたりを若者の問題として取り上げているのがNHK「オイコノミア」という番組。
 その番組で先日かなり決定的なことが語られていた。(1月22日放送「僕らがツケを払う・・・のか!?」)
 それは2014年あたりが日本の財政破綻の分岐点になるという話。


以下はその問答。又吉とは芸人の又吉直樹氏、大竹とは大阪大学教授の大竹文雄氏。

又吉 その時(財政破綻)はいつ来るんですかね?
大竹 こればっかりはなかなか難しいんですよ。みんなが(国債は安全だと【注おおば)信じているわけですから。いつかというといろんな可能性があると思うんですけどひょっとすると早ければ2014年に財政破綻のきっかけを迎えるかもしれない。
又吉 2014年?もうすぐじゃないですか。
大竹 そうですね。だけど分かんないんですよ。
又吉 きっかけになる可能性がある、何かがあるという事ですよね。
大竹 あと1年ですよね。政府の日本の公債が1400兆円の金融資産を超えるかもしれない、と言われているんです。
又吉 いやー恐ろしいですね。
大竹 いま私たちはね、経済的に巨大な日本を潰すのか潰さないのか、ひょっとすると歴史的な分かれ道に立ってるのかもしれないですよ。
又吉 なるほど。・・・まさか日本がこんなに追い込まれている状況だとは思いませんでしたね。かなり不安になってきましたね・・・。【番組終了】


 つまり、日本の国債はそのほとんどを日本人が買っているから大丈夫という「安全神話」すら数字の裏付けを失いつつあるということ。財務省が叡智を絞って日本人に(金融機関を通じて)日本国債を保有させるような様々な仕組みを作っても、それを買う元手となる金融資産以上に借金が増大すれば、誰が国債を買ってくれるのか?たぶん外国人が買うかもしれないが財務省のコントロールが効かないから、国債の価格がある程度まで下がらないと買わない。すなわち国債の暴落と金利の上昇である。
 何がきっかけになるかは示していないが、財政破綻が進む過程をコンパクトにまとめたのが上の昨年9月28日の日経新聞コラム「大機小機」。そこで書かれているのは日本がたどり着く「禁じ手」のことである。コラム氏は日本と債務不履行に陥ったギリシャとの決定的な違いは日銀(中央銀行)からの低利借り入れという「禁じ手」が使えるかどうか、であり(ギリシャには独自の中央銀行を持たない)、公務員給与や社会保障給付の支払い不能に直面した政府はこれをやらざるを得なくなる、と云う。
 要は日銀にお金をじゃんじゃん刷らせるということである。
 
 デフレの今、モノがこんなに余っているのに、しかも需要がさっぱりないのに、どうしてモノの値段が上がるのか?と疑問に思うかもしれないが、貨幣価値が下がれば見かけ上は値段が上がることになる。

 実はNHKでは国債クライシスについて、ちょくちょく深夜枠で警告を発する番組を作っている。例えば2011年7月29日放送の「真夏の夜の経済学」では国の借金地獄から逃れる方法を述べている。
 そこでは当時は、まだ国の借金が924兆円(国債及び借入金)で、どうして国債は暴落しないのかということを経済学者の安田洋祐氏が解きます。

 その第1の理由は、政府資産があるからということです。平成21年度財務省・国の財務書類によれば
       土地    56兆円
       有価証券  92兆円
       貸付金   155兆円
       現金預金  19兆円
       出資金   58兆円
       その他
                     ----------------------
                       合計   647兆円

 つまり実質まだ300兆円くらいの借金だということ、ただし資産がいつでも換金できるわけではなく、ムリに売ればそれこそ資産が暴落すると安田氏も認めている。さらにこの資産は現在目減りしており、借金総額が1000兆円を超えて上記のように1400兆円に迫ろうとしている時に、どれほどの「抑え」になるのか。さらに米国債券等を売却すれば世界経済に影響し売るに売れないこともあるだろう。

 2番めにあげているのは、国債の95%は日本人が買っているから、というもの。ただしこれは上記「オイコノミア」で言っているように日本人の個人金融資産を超える国債をどうやって国民(実際には金融機関等を通じてだが)が買えるのか?これもあやしくなってきた。

 3番めにあげているのは、日本はまだ増税余地があるから、というもの。消費税が他国に比べて低いということである。これも、経済低迷の中で税率アップしても税収が増える保証はない、という段階にきており、これもあやしい。
 たった1年半前の番組にもかかわらず、借金の規模が大きくなると相対的に国債クライシスが起きない不思議な日本の状況の説明もあやしくなってきた。

 ここまでは国債が暴落しない理由の説明なのだが、興味深いのは、この借金大国の状態を解決する「裏ワザ」を安田氏が披瀝していること。
 何とインフレーション!ただし、インフレをどうやれば起こせるのか?またインフレの歯止め(コントロール)ができるのかが問題という、現在のいわゆるアベノミクスに対する疑問と同じようなことを安田氏は述べている。(どっちかと言えば安田氏は軽く語っていたように思えるが)
 ただ単純に考えても、仮に物価が上がっても同時に収入が増えなければ生活は困窮する。また無理な需要を作っても、エコポイント需要が去ったあとの液晶テレビ不振のように、消費増税前の駆け込み需要の反動だってある。
 
 確かにインフレによる借金の縮小というのは、例えば国の税収が500兆円くらいになれば過去の1000兆円の借金というのは、さほど大きな負担ではなくなる。ただしここで安田氏が指摘するのは、新規国債が発行できない、という決定的な問題である。
 これは借り手にとってはインフレは味方でも、貸し手にとっては敵になることからもわかりやすい。となればプライマリーバランスをゼロ(新たな借金はしないでやっていける財政運営)にしなければインフレーションを起こせないということになるが・・・。現状のようなままで新たな借金をしつつ、インフレを起こすということは必然的に日銀の国債引受のようなことになってしまうのだが・・・。
 次に安田氏が挙げた「裏ワザ」というのがデフォルト。もちろん推奨しているのではなく、国がそういうことをやり兼ねない、追い詰められればそうなる、というスタンスだろう。ナレーションではこう続く「かつて危機(国債暴落)を迎えた国々はその直前まで危機が近づいていることを認めようとはしなかった。世界で最も安全な金融商品の一つ国債、しかしその歴史をひも解けばデフォルト、つまり踏み倒しのオンパレードでした。」ちなみにナレーションでは「1998年にデフォルトを起こしたロシアでは市民の預金が封鎖、多くの銀行が倒産、通貨暴落、消費者物価が84%上昇、失業率は14%まで悪化、国民の平均賃金は23%減少」という。まあ、財政破綻しても国債暴落しても国民全員が生きていけなくなるということではないようだが。
 そして番組(真夏の夜の経済学)の最後で
 「国債の暴落は予測できないことが経済学で証明されている」これは経済学の真理だということを強調して終わる。

 すでに日本人は「想定外」なんてことは言うのはよそう、「安全神話」を疑ってみよう、起こってほしくないことに思考停止はやめよう、ということを学んだはずである。国が借金して地方自治の多くの施策を支えている以上、そして国の借金を手際よく増やすことに熟練した政党が国家運営をし始めた以上、考えられることは地方議員レベルで考えなくてはならないと思った次第。

2013/01/27

税金使って景気回復なんて


 125日までに議会各派(議員全員)への区側からの新年度予算の事前説明が終了した。
 まず驚かされたのは、国による「公共投資関連」に対してのおカネの出し方の気前のよさ。そして手際のよさ。まさに至れりつくせりの感が否めない。世田谷区でそうなのだから、地方ではちょっとしたフィーバー状態なのかも知れない。
 結局、昨年末の政権交代の“効果”が一般区民も知らない所で、つまり地方自治体の予算書レベルで素早く進行していたということだ。税金使って公共工事を増やし景気回復というのは、ここ20年失敗の歴史である。
 それどころか、国の借金は増え続けて止まらない。
 国の借金は国民からしているから大丈夫という言い回しもいずれ使えなくなる。
 そりゃ、国家予算の半分を借金で賄っていたら、日本の個人金融資産がどれほどあろうと、いつかはそれを上回り、国外から借りる時がやってくるだろう。
 とにかく民間による新たな産業を起こし経済を発展させなければ税収は上がらないし、借金体質から脱出できない。(左上は1月26日の日経新聞。「建設業界としては、スピード感ある動きに大いに感謝している」と業界代表が国交大臣に述べたということだが、その実態は各地方自治体の新年度予算及び今年度の補正予算の中に書かれているということ。)

2013/01/25

チェック機能の甘さからくる不幸な出来事


 埼玉県ほかで定年退職をむかえた公立高教員が大量に1月末に駆け込み退職を申し出ているという。2月になると退職手当が引き下げられ、計算上では3月末まで務め上げるよりも1月末で辞めた方が退職金を含めて総額で70万円多くなるという。
 金勘定70万円のために学校行事が忙しくなる2月と3月の仕事を放擲するのかという批判はあるだろうし、ましてや学級担任ともなれば、何年か後の同窓会に呼んでやるものかという生徒たちの感情もあるだろう。
 ただし一番責められるべきは議会だろう。「仕事をしない方が多く貰える」ような仕組みを認めたのは議会である。
 東京都では3月末まで務めた方が多く貰える仕組みにしているから、このようなことはない。(たまたまだったかも知れないが・・・)つまるところ議会のチェック機能が甘かったということだろう。
 「意味もなく人を試すような社会システム」は結局不幸を生むばかりである。今回の場合は、意味もなくどころか思いもよらなかった点が甘さに通じたのだが。もちろん自戒を込めてである。

2013/01/16

アベノミクスの敵

 15日の毎日新聞にノーベル賞経済学者クルーグマン氏がアベノミクスが「結果的に完全に正しい」と“評価”した、と伝えている。アベノミクスが何を指しているのか、クルーグマン氏がどの部分を完全に正しいと評したのか不明だが、株価は上昇し、円安に動き、少なくとも、株価が下がり続け、円高に貼り付いたままの民主党政権よりマシだと国民は感じている。
 一方で、補正予算13兆円、国債増発7兆円である。衆院選勝利のハイ状態でこんなことでいいのだろうか。アベノミクスの敵は金利である。そのことをクルーグマン先生は案じているようだが。行革パン屋の後藤雄一さんのHPが面白い。

2013/01/13

黒書院の六兵衛

 日経新聞朝刊の「黒書院の六兵衛」(作・浅田二郎 画・宇野信哉)が実に面白い。連載は昨年5月から始まり、年をまたいで今年は227回から続いている。物語は江戸城明け渡しを軸に大河ミステリーのような謎が謎を呼ぶ仕立てになっている。
 最初に興味を覚えたのは宇野信哉氏の挿絵。上掲はまさにその象徴とも言える、第4回のもの。江戸城の入り口(外桜田門)で城引き取りの官軍(先遣隊)を出迎える旧幕臣の姿である。何と西洋式の蝙蝠傘を差している。本文では「旧幕臣の間には、この黒木綿の西洋傘が流行している。」とあるが、こんな光景になるとは。
 番傘のような二等辺三角形ではなく、こんもり円い傘を差して居並ぶ旧幕臣の姿は「ご時世」とはいえ複雑な心境をまさに画に語らせている。(単行本になったらこれらの画はなくなってしまうのだろうか?もったいない)
 ストーリーもさることながら、当時の社会常識も織り込まれ、ちょっとしたトリビア的要素も。例えば47回で、旗本の家では「お殿様、奥様」、御家人の家では「旦那様、御新造様」と呼ぶことになっていたとか。・・・とすれば奥様が「ウチの旦那が」と呼び捨てにするのは歴史的には正しいのか?とも。
 さて今年の日本は政権はかわったものの、前政権の3年を超える修復以上の域はまだ出ていない。参院選までが事実上の選挙期間ということなのだろう。
 世田谷区政的には、あちこち区民のみなさんの声を聞けば、世代を超えて、役人の天下りということに厳しいようだ。そりゃそうだ、若者は正社員には簡単になれないし、団塊世代以下はリストラや無事定年を迎えてもその先どうするのか何の保証のない当節だ。